2026年のテーマは「独立未満」

他から束縛や支配を受けず、自分の力や意志で別個に存在・行動すること。具体的には「離れて別にあること」「自力で生計を立てること」「国家や組織が主権を持つこと」である。その未満。
kakijiro 2025.12.26
誰でも

いつの日からか社会と他者に寄りかかるような依存をせず、自分の足でしっかり立って生きていきたいなと思うようになった。複数の小さな依存先を見つけて、多様なつながりのなかでリスクを分散することが自立だとも言われている。

この観点でいえば10年前に「全国47都道府県にホームを作りたい」と考えて全国行脚をした結果、希少種である編集者の職能があればどこでも生きていけるようになったのは大きい。実際、どこでもやっていける自信がある。選択肢は無数にあり、土地ごとに友人知人の顔が浮かぶため、馴染むのに時間はかかっても、死ぬことはないだろうなと。

会社を10年近くやってきた経営者、法人としての信頼も微力ながら蓄えてるし、長野県信濃町で暮らしている土地は自分のものだし、土や水も確保できている。生きる力よりも、死なない力を意識してきた感覚が強い。文化資本や経済資本が乏しい状態から43歳でようやく独り立ちできたのかもしれない。

独立とはなんなのか?

この「独り立ち」、すなわち「独立」という二文字の言葉をここ2年ぐらい考える機会が増えた。辞書によれば、他から束縛や支配を受けず、自分の力や意志で別個に存在・行動すること。具体的には「離れて別にあること」「自力で生計を立てること」「国家や組織が主権を持つこと」とされている。

束縛や支配に対する独立は、歴史上とても重要なキーワードであるものの、現代における小さな個人の「独立」は、”会社を辞めてフリーランスになる or 会社を設立する”……がしっくりくる。実際、私が2016年12月末に前職の株式会社バーグハンバーグバーグを辞めたときのブログには「独立します」と宣言していた。

では今回の「独立未満」は何を指すのか?

私自身の衝動として、世の中の「こうあるべき」を疑って、一時的に流通しただけの常識から離れたい性分がある。都市じゃないと生きていけない。お金を稼いで貯金が数百万円ないとダメだ。大きな会社に就職したほうがいいなどなど、定番の価値観が世の中に広まっていて、その側面はしっかり理解したい。全否定はできない。それでも、その思い込みから抗うパワーを持っていないと、その価値観に適用されなかった人間の人生はどうなるんだ?と問いたい。

そっち側に行けなかった私の生存戦略は、一度都市のITバブルのど真ん中にもぐりこんで、そこで得た仕事の経験値や会社の関係値を吸収し、全国47都道府県のローカルを泥臭く行脚しながら、手間とコストを惜しまない会社の旗を振り続けることだったのである。幸いにも小さく成功した。

さらに衝動のギアを毎年一速ずつ上げて、いまや豪雪地帯に家を買って暮らし、スモールビジネスを田舎で実践している。コーヒーや本で生計を立てる難易度はとても高い。実生活では農作業、集落の草刈り、除雪の大変さがつきまとう。どれもが既存の価値観から反対側なのかもしれない。だが、この身体性を伴った”こっち側の世界”にこそ本来のど真ん中、自然と共に生きる知恵と技術があるんじゃないかと信じている。

既存のシステムを賢く活用しながら、マイノリティ側に追いやった自然との暮らしをサバイブのために耕す。私の生活にスローライフなんて要素は1ミリもない。毎日が忙しない。思いつきをひとつずつ形にしていく。一方の極端な価値観に人生を賭けずとも、その合間の中で「独立」の意識を育てることが可能なんじゃないか。

独立の手前にある言葉や生き様が”未満性”であり、不確実性の高い2026年を気持ちよく回遊するためにまだまだ曖昧な”独立未満”の旗を掲げてみたい。いつか「独立未満」をテーマにした本/雑誌も作りたいなと思っている。表紙と特集は、独立を象徴するラッパーのKREVAにお願いしたい。

20年以上シーンのトップを駆け抜ける彼のスタイルは、他の追随を許さない。時間とともに敵がみんないなくなっていく。故に自分を鼓舞し続ける歌詞が多い。その言葉に私も20年以上勇気づけられてきた。「敵がいない国」は、老荘思想のように不戦勝の無敵さを歌っていて痛快だなと思う。

The Letterにはコミュニティのスレッド的な機能があるそうだ。意見交換ができる。これから実家を出る若者もいれば、会社を辞める人も増えるだろう。夫婦関係に区切りをつけて、また一人で暮らす人もいる。その人たちと共に考えて、出発点を作りたい。私自身も会社の経営者であるという思い込みから独立したいと模索している。法人を手放す利点はなにもないが、経営者が”独立未満”の意思を尊重することも可能なはずだ。

なぜなら社長と社員の矢印があまりにも一方通行すぎて、端的に言ってつまらない。ピラミッド構造の頂点に社長を置いて、鎧を着せて、何かあったら全責任を負わせる。それが社長という思い込みの残酷な正体でもある。ほな、その鎧を脱がせてもらいまっせでいきたい。ロンT一枚ぐらいがちょうどいい。矢印の矛先に柔軟性を持たせないと、ガッチガチの思い込みから生まれるディスコミュニケーションによって経営者の心はあっというまに脆く折れてしまう。

まったくまとまらないまま2000文字に到達したが、ぜひこの”独立未満”に興味があれば感想を教えてほしい。もしくは独立に踏み出す覚悟を持った人にも読んでほしいなと思う。

無料で「徳谷柿次郎の「独立未満レター」」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら