酒場でまた一人救われた。函館『歩々清風』の夜
年始早々に函館へ。信濃町の自宅を出たのは朝9時前。
電車の接続が悪くてローカル線で長野駅へ。新幹線まで1時間ちょっと空いたので、信じられないぐらいの集中力で仕事をこなす。たぶん3時間椅子に座っていたら、あらかた終わるんじゃないだろうか。北陸新幹線→大宮乗り換え→東北新幹線で「新函館北斗駅」に着いたのは16時30分だった。
ここから札幌まで延伸される未来を託されている駅だが、まだまだ周辺は未開発でさみしい光景だなと毎回思う。普段は駅前の再開発しすぎだろ、と思うことも多々あるが、新幹線主要駅×開発の魔法は経済合理性の名の下に判断されているのだろう。理屈がなければ開発はピタリと止む。
夜は函館のお友達・阿部光平さんと3軒はしごのサシ飲みだった。4年ぐらい前に大阪・西成取材の流れで飲んで以来かもしれない。3日前も飛騨の白石くんとサシ飲みしたばかりだし、普段はあまりやらないサシ飲み元年としていきたい。人生の転機とともにサシ飲みの風はやってくる。
「最後にコーヒーでも一杯飲みますか」と立ち寄ったお店がタイトルの『歩々清風(とぼとぼせいふう)』で、一見さんには読めないだろう。禅の言葉で「一歩一歩の行動や行いの中に、清らかな風が自然と起こる」という境地を表し、「無心で迷いのない、正しい行い」を指すそうだ。正確には「歩々清風起」らしい。
序盤はカウンターでいい感じに飲んで話していたのだが、途中から70代後半の渋いマスターが声をかけてくれた。阿部さんと人生を交わした会話から興味を持ってもらえたのかもしれない。距離と声色。50年以上飲み歩いてきた先輩の喋り口からポロポロこぼれおちる金言を拾うたびに「うわー、めっちゃ刺さる!」と大騒ぎしてしまった。
「仕事に本気で向き合う40代の働き方が人生を決める」
「50代で大きな仕事が生まれ、60歳できっと楽になる」
「すべての出来事は人生の肥やし」
「30年後には北海道が日本の重要拠点になる」
「終の棲家なんて決める必要ない」
などなど、時間軸が過去から未来に移り変わりながら、酒場で偶然生まれた会話としては超一級品だった。酔っているけれど、酔えない。フラフラではあったが、頭はシャキッとする。大手航空会社から貿易会社を起業し、世界と日本を旅して、最後に辿り着いたのが函館というマスター。そのキャリアと人生観から生まれる説得力は、時代の荒波を掴んで乗りこなしてきた男の色気そのものだった。キングオブ達者!
同じ「風」を背負いし大先輩として、とても勇気づけられた夜だった。函館に来るたびに寄りたくなる。いや、きっと何度も行くことになるだろう。家にこもりきりだった年末年始の鬱憤は、旅と友だちと酒場ですべて吹き飛んでしまった。なんてシンプルなんだろうおれは。マスターが途中、「うちのコマーシャルソングがあるんだよ」と聞かせてもらったサビの歌詞がまたよかった。
「笑い皺増やして、人生飲み干そう」
なんも写真撮ってねぇや。
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