新宿で飲んで大宮で泊まる

ビジネスホテルの宿泊費高騰に巻き込まれて
kakijiro 2026.04.22
誰でも

春は東京出張が億劫になる。

理由は明確で、ビジネスホテルの宿泊費が2万円を超えてくるからだ。サウナ付きのカプセルホテルも1万円を超えてくると「これはもういよいよだな…」と眉間にシワを寄せてしまう。

Bookingと一休、そしてローカル宿を求めて楽天ホテルまで探していくわけだが、この祈りにも似た行動は徒労に終わることが多い。二週間かけて何度も何度も相場を眺めても、当たり前だが値段は下がらない。勢いでポチることもしたくない。コロナ禍で下がりすぎた価格相場が、過去の成功体験のように染みついてしまっているのだろう。

8000円で泊まれるドーミーイン渋谷明治神宮前にはもう二度と泊まることができない。週末は1泊3万円ぐらいしてるんだもの。無理だろそんなの。ドーミーインってそういう存在じゃなかったはずだろ!ちくしょう!

そもそも泊まりたいホテルが少ないのはある。都心で大浴場付きは贅沢品だ。諦めてサウナ付きのカプセルホテルに泊まるしかないのかもしれない。

「どうせ酒を飲んで寝るだけだから」

体力のあるおじさんはそれを良しとするかもしれないが、脆弱な旅おじさんは抗いたい。昨年、LDLコレステロール値が要治療レベルになってしまった私は「なにをしても疲れやすい呪い」にかかってしまった。

血流がドロドロなのだとしたら、アルコール分解にエネルギーを必要以上に要する。ふくらはぎがパンパンになりやすいのも、移動で腰が痛いのも、ぜんぶLDLコレステロール値の仕業だとしたら……? 

あまりにも健康事情に寄りすぎているが、できるだけ静かな個室で寝たい。大浴場はなくとも湯船に浸かる努力も必要だ。あと酒を控えろ。深夜まで飲むな。もっと運動しろ。ホテル代の高騰について考えると、自分にブーメランが戻ってくるのでつらい。うう。

昨日、新宿で青木真也さん自主興行「エイキオクラッチ01」に行った。前から2列目。プロレスと格闘家の融合と20年分のストーリーが交差して、とてつもなくおもしろい大会だった。生きてるっていいな。身体で表現するってすばらしいな。月並みな感想だけれど、喧嘩コンテンツとフェイクな映像を日々見せつけられている側からすると、信頼関係を持った上で肉体と生き様をぶつけあう姿はとても美しい。

先輩の竹中さん、菊池さん、そして太郎ちゃん、藤原慶くんの5人で「上海小吃」へ。東京、新宿、歌舞伎町のカオスがいまだ健在の店構えと店内の空気、そしておいしい料理の数々に触れて「ああ、これは東京の強さだな」と思った。荒々しい場所で荒々しい会話をする。それだけでエネルギーが高まるタイプの人たちがいる。自分もそっち側なんだろう。漂白されすぎた社会の中で全員が無菌でいられるわけもなく、人間の持つ猥雑さみたいなものを受け止めて、言葉にして、すべてを忘れて死んでいくだけだ。

23時50分に店を飛び出て、新宿駅まで駆け足で移動する。大宮駅行きの終電がギリギリすぎた。宿が高すぎたので、大宮駅前の東横INN=9000円が最終判断だった。めんどくさいなと思ったけれど、明日は長野駅まで戻る。途中の大宮駅で宿泊するのは悪くない選択肢だった。残っていても深夜2時過ぎまで思考停止で飲み続けてしまうため、終電で区切るのは潔い世界線ともいえる。

浅草と新宿のインバウンド需要を生身で触れて、朝起きた大宮駅は観光客がほぼ見当たらないローカル都市の完成形のように見えた。むしろ居心地のよさと美しさすら感じたのは、社会変化の中でたどり着いた景色なのかもしれない。大宮とモンベルの再評価はどこか似たものを感じる。

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